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七子小緑印圓茶7542の散茶

xiao liu yin yuang cha 7542 qi zi bing cha

七子小緑印圓茶7542の散茶
七子小緑印圓茶7542の散茶

七子小緑印圓茶7542の散茶
2006/09/12 終了

製造 : 1970年代末期
茶廠 : 雲南孟海茶廠
茶山 : 西双版納 易武山
茶樹 : 雲南大葉種
茶葉 : 3~8級
工程 : 生茶
重量 : 散茶のためグラム売り
倉庫 : 香港乾倉

甘味
●●●●● 濃厚に甘い
渋味
●●○○○
とろみ
●●●○○
酸味
●●○○○
苦味
●●●○○ ほろ苦い
香り
●●●●○ 樟香、蘭香、沈香、棗香
熟成度
●●●●○ 強いめ

口に溶けるようにまろやかで、濃厚な甘味と旨味があり、軽快な苦味や酸味のバランスよく、芳醇という言葉がピッタリな風味です。
易武山の茶葉の樟香、蘭香、沈香、糯米香があり、1950年代の傑作「印級」のお茶に通ずる迫力があります。
「七子小緑印圓茶」は、1980年代初期から「7542七子餅茶」と名前が付いた銘茶のルーツです。


■このお茶の由来 (7542七子餅茶の生い立ち)

「7542」には、1975年の「75」。4級茶葉の「4」。孟海茶商の「2」という意味があります。
1960年頃からの「大躍進」政策や、1970年前後の「文化大革命」にともなう農業改革の影響により、その頃の茶山では古茶樹を切り戻して短くしたり、新しく山を開墾して若い茶樹を密集させて植える新茶園が作られました。メーカーでは生産効率を改善するための新しい製造方法が試みられました。メーカー内の施設で茶葉を渥堆発酵させて短期間で熟成した茶葉を作る「熟茶」の量産が始まったのもこの頃です。
当時国営工場であった孟海茶廠(メーカー)では、品質を安定させた定番商品を作るための「標準化」したお茶作りが研究されました。収穫場所や収穫時期の異なる茶葉を等級別に分けて晒青毛茶(プーアール茶の原料の茶葉)を確保しておき、1枚の餅茶(円盤型の固形茶)をつくるときに再構成してブレンドする「配方」のお茶作りが考案されました。

7542七子餅茶の表面
7542七子餅茶の裏面

餅茶の表面、裏面、内側に、それぞれ異なる等級の茶葉を配置します。「7542七子餅茶」は比較的小さめの等級の茶葉が多く使用されます。おなじく「7532七子餅茶」が小さめの茶葉が使用されるため「小葉青餅」と分類されます。それに対して大きめの茶葉が使用される「7582七子餅茶」や「8582七子餅茶」を「大葉青餅」と分類されます。

7542の配方について
7542の配方について
7542の配方について
茶農家は晒青毛茶(プーアール茶の原料の茶葉)を等級別に収めることになり、そのため茶摘みをしてすぐに茶葉の選り分け作業をする必要がありました。
茶葉は等級分けされるようになります。

「小葉青餅」に使用される新芽や若葉は大葉に比べて重量が少なく、茶摘みされる一芽二葉~一芽三葉から一芽一葉を選り分けるとたった5分の1の重量になります。新芽や若葉の配合率の多い「小葉青餅」は贅沢なお茶なのです。
茶葉の選り分け作業は時間がかかります。茶農家にとっては作業効率が悪く、総合的に見ると農業改革の試みは欠点もあるのですが、 国営メーカーの孟海茶廠にとっては以下のような成果がありました。

  1. ブレンドを変えることで風味の異なる商品が作れる。
  2. 毎年同じ味が再現しやすく定番商品ができる。
  3. 餅茶の表面を美しく仕上げられる。
  4. 長期保存熟成による味の変化を安定させられる。

そして1970年代中頃から茶葉の配合の異なる製品に番号、「7542」、「7532」、「7572」など四桁の番号が割り当てられます。これを「茶号」と呼びます。
「茶号」のお茶が登場する少し前の1960年~1970年末頃の餅茶には、実験段階の製品がいくつかあり、それらに「茶号」はついていません。

これらは「茶号」がなくとも、「配方」の試された様子が餅面(餅茶の表面)や餅里(餅茶の内側の茶葉)から伺えます。しかしそれは曖昧なもので、後に完成された「7542」、「7532」など、どの茶号に該当するかを特定するのは難しいところがあります。

ここで紹介する「七子小緑印圓茶」が、「7542」の前身となったことがはっきりと茶葉から確認できるのは、「七子小緑印圓茶」(1970年中期~1980年初期)になります。「7542」の「75」は1975年ではありますが、1970年代はまだ「七子小緑印圓茶」と呼ばれていたため、純粋に「7542」と呼べる製品は、1980年初期からということになります。
このことをふまえて、このお茶の名前を、「七子小緑印圓茶7542の散茶」にしました。

「七子小緑印圓茶」1980年代初期
七子小緑印圓茶1980年代初期
「七子小緑印圓茶」1980年代初期
包み紙の中央の「茶」の字は、手押しの印鑑です。しかしインクの色は名前には関係していないようです。その他にも鑑定のポイントは、内飛(茶葉に埋め込まれた紙)の字体や、包み紙の質など、いろいろとあります。

この写真のお茶は1980年代のものなので、「配方」が研究されはじめてから10年ほど経っています。茶葉の等級からは「7542」の特徴がはっきりと確認できます。1980年代にはすでに「7542七子餅茶」と名付けられる常規(毎年同じ方法で作られる)製品がありますが、そのうち新芽や若葉の使用がやや多く、内飛や包み紙の質に特徴のある品が「七子小緑印圓茶」の1980年代初期のものです。

「小緑印」の名前の「小」の由来は餅身(餅茶の形)が同時期の「大黄印」や「大藍印」にくらべて小さいことによります。この大きさの違いは、茶葉の配合の違いからきています。
「小緑印」は小さめの等級の茶葉で構成される「小葉青餅」。「大黄印」や「大藍印」は、大きめの等級の茶葉で構成される「大葉青餅」と呼ばれます。
小さめの等級の茶葉を圧延して固めると、茶葉は緊密になるため、同じ重量の茶葉を固めても餅身は小さくなります。


七子紅帯青餅プーアル茶
上: 「小口中」字版 「七子小緑印圓茶」1980年代初期
下: 「大口中」字版 「七子紅帯青餅」1970年代

「七子小緑印圓茶」は1970年代と1980年代で、包み紙の印刷が異なります。 「中国土産畜産進出口公司雲南省茶葉分公司」の「中国」の「中」の字の、
「口」の大きな文字が「大口中」字版1970年代まで。
「口」の小さな文字が「小口中」字版1980年代~。
「大口中」か「小口中」かが年代の鑑定ポイントとなります。

「大口中小緑印圓茶」のなかに、またの名を「七子紅帯青餅」と呼ばれるものがあります。これも「7542」の前進であると言われますが、当店で紹介した「七子紅帯青餅」のページでも説明しているように、「7542」というよりは「7532」に近いものです。「加重萌芽」(芽の部分を多く加えてある)の割合が多く、より小さな茶葉で作られた「7532」に近い風味になっています。
+【七子紅帯青餅プーアル茶】

7542七子餅茶80年代中期
1980年代初期から純粋に「7542七子餅茶」または「7542青餅」と呼べる製品が存在します。「七子小緑印圓茶」に比べると新芽や若葉の配合割合が少ないため、とくに裏面に配置される茶葉に粗茶葉や茎の部分が多くなります。
これはつまり同じ「配方」によって作られた「7542七子餅茶」シリーズの中に、新芽や若葉の配合率の多い品もあれば、粗茶葉の多い品もあるということになります。
1990年代前半くらいまで孟海茶廠のつくる餅茶は海外に輸出して外貨を稼ぐ目的の高級品になるので、どちらにしても雲南のプーアール茶の中では選りすぐりの茶葉が使用されています。
この頃、香港の茶商の南天公司が、大量に「7542」をはじめ、「7532」、「7572」を注文した記録があります。香港を経由して主にヨーロッパや東南アジアの都市へ輸出されていました。

千禧年7542青餅00年
1990年代の中頃から、「7542」に使用される茶葉の産地が変わったような形跡があります。風味からもそれが感じられます。1990年代前半までは西双版納の江北の茶山(旧六大茶山)の風味の「7542」が多く、1990年代後半からは江南の茶山(新六大茶山)の風味のものが多くなります。
江北と江南の風味は異なります。江北の茶山(旧六大茶山)は軽快で淡い風味で、香りは華やかです。江南の茶山(新六大茶山)は厚みと重みのある風味で、香りは素朴なところがあります。
2000年につくられた「千禧年7542青餅00年」のページにてそれについて触れています。

参考ページ
+【西双版納の江北の茶山】
+【西双版納の江南の茶山】
+【千禧年7542青餅00年プーアル茶】

7542七子餅茶99年無内飛 プーアル茶
紫大益7542青餅00年プーアル茶 プーアル茶

1990年代後半から徐々に輸出向けプーアール茶の製造販売が自由化されます。それにともない専売公社の役割をしていた「中国土産畜産進出口公司雲南省茶葉分公司」の中茶マークが、孟海茶廠の独自商標の「大益」マークに変わってゆきました。
「7542七子餅茶」もこの変化に伴い中茶マークの品から大益マークの品へと変化してゆきます。
この過渡期には孟海茶廠が香港や台湾の茶商から小ロットのオーダーを受け付け、茶葉の産地の指定や等級の指定ができるお茶作りをしたため、「7542七子餅茶」にも様々なグレードの品があります。

大益7542七子餅茶06年プーアル茶

孟海茶廠は2004年に民営化されました。
民営化されてからは「7542」を孟海茶廠の独自ブランド製品とし、販売先を中国国内向けに重点を置いたため、安い価格設定になりました。その分原料となる茶葉は量産タイプの新茶園の若い茶樹のものが使用され、機械製茶が取り入れられ、風味は過去のものから大きく変わりました。
専門だけに流通していた品がデパートやスーパーでも販売されるようになり、包み紙は開封できないようにシールが施されるなどして、量販に適した形の商品になりました。

73青餅プーアル茶
73青餅プーアル茶
上: 73青餅7542七子餅茶(1984年)
下: 大益7542七子餅茶(2007年)

1980年代までは製茶段階での「揉捻」はすべて手作業で行われていました。1990年代後半あたりから機械の「揉捻」が増えてゆきます。やわらかな新芽や若葉は強い力が加わるとちぎれやすいため、手作業でやさしく「揉捻」された茶葉はしっかり捻れて細くなります。機械の「揉捻」では力が強く加わりすぎて茶葉がちぎれるため、全体的に「揉捻」が甘く仕上がり、茶葉は扁平な感じになります。

    「7542七子餅茶」の商品的なグレードを年代別に見ると、  
  1. 1970年代 贅沢な試みのある極上の高級品>
  2.  
  3. 1980年代 価格と品質のバランスの良い高級品
  4.  
  5. 1990年代 ピンからキリまである高級品
  6.  
  7. 2004年~ 比較的大衆品

このように同じ「7542七子餅茶」にもいろいろあります。

参考資料:
『深邃的七子世界』 158~168ページ 
著者:陳智同氏 五行圖書出版有限公司
『茶藝普耳茶大辞典1994-2007』 79ページ
著者:季海氏 五行圖書出版有限公司


■このお茶の試飲について

今回入手できたのは餅茶を崩した「散茶」で、包み紙がついていません。文字のデザイン等からの鑑定ができません。また、いったい何年ごろに崩されたのかもわかりません。当店が見つけたときにはすでに散茶になり、1斤500gずつに紙袋に分けられていました。

しかし、崩された茶葉の様子と、試飲を重ねた結果、これは「7542」の茶葉であると判定しました。また、以下に紹介する1980年代の「7542七子餅茶」や、「七子紅帯青餅」との飲み比べによって、その風味からみても、まず1970年代の「7542」としても問題はないと判断しました。したがって「七子小緑印圓茶」の名前が適当であると思われます。

七子小緑印圓茶7542の散茶
七子小緑印圓茶7542の散茶
茶葉は小さく細く、手もみ作業によってしっかり捻れのある形をしています。一芽一葉の特級茶葉の様子が伺えます。

七子小緑印圓茶7542の散茶 口に溶けるようにまろやかで、濃厚な甘味と旨味があり、苦味や酸味のバランスよく、芳醇な風味です。かすかに樟香、蘭香、橙香、沈香、糯米香に表されるような易武山の古茶樹の茶葉の風味があり、1950年代の「印級」のお茶にも通じる迫力です。
散茶のためか、それとも倉庫の環境のためか、やや熟成がすすみ過ぎた感じはしますが、それでも風味に濁りはなく、茶葉の質、倉庫熟成ともに完成度の高いお茶に仕上がっています。

七子小緑印圓茶7542の散茶
七子小緑印圓茶7542の散茶
葉底(煎じた後の茶葉)
手作業でしっかりと「揉捻」された茶葉で、しかも30年以上の老茶となると、茶葉は開きにくく、まる一日水に漬け、ゆっくり茶葉の開くのを待ちました。赤く変色した茶葉、カサカサした質感、ザラザラして、古茶樹の特徴があります。またところどころイボイボのある表面は茶商の倉庫熟成で、金花などのお茶を美味しくする菌類の活動がわずかながらにもあった跡です。

4級(7542の4は4級茶葉)くらいの茶葉が多く、新芽や3級の多い「7532」との違いは明らかです。

1960年頃からの農産物の効率化と「標準化」したお茶作りために、茶山は収穫率の悪い背の高い古樹は切り戻しされ、新しく切り開かれた新茶園では収穫率の良い若い茶樹への植え替えがすすみました。若い茶樹は葉をたくさんつける分、葉は小さく薄くなってゆきます。風味が軽やかで飲み頃になるのは早いため、時代の要求に沿っていたのです。

それでもなお1980年代までの「7542」には、この「七子小緑印圓茶の散茶」のように、古茶樹の特徴が見つけられます。当時はまだ「7542」が外貨を獲得するための輸出用の高級茶という位置づけであったため、とりわけ上質な茶葉が選ばれていたのでしょう。

自由化された現在の、とくに民営化された2004年以降の孟海茶廠の「7542七子餅茶」などの常規茶は、国内向けの大衆的な位置付けの商品となり、量産可能で廉価な新茶園の茶葉が使用されるようになりました。

■飲み比べ

「7542」のルーツであるこのお茶「七子小緑印圓茶の散茶」と、「7532」のルーツである「七子紅帯青餅」の飲み比べです。

七子小緑印圓茶7542の散茶と七子紅帯青餅
七子小緑印圓茶7542の散茶と七子紅帯青餅
左: 七子小緑印圓茶7542の散茶 (このお茶)
右: 七子紅帯青餅

この二つの共通点は、1970年代の「配方」がまだきっちりと定まっていない頃の、「配方」が試みられたお茶です。
「七子小緑印圓茶の散茶」は、甘くまろやかでコクがあり、「七子紅帯青餅」は、甘くまろやかながら、すっきりとした酸味があります。
この2つには熟成の差が大きくあります。それが風味の差につながるのですが、そもそも熟成の差は、圧延された茶葉の状態が、「7542」と「7532」とで異なるところも関係しています。

「7542」と「7532」の餅面を比べます。

7542
7532
上:「7542七子餅茶80年代中期」
下:「七子紅帯青餅」

「7542七子餅茶80年代中期プーアル茶」は、正真正銘の「7542」です。茶葉は大きめで立体感があり、隙間が開いています。「七子紅帯青餅」は小さな茶葉で、きっちりと詰まっていて、「7532」に近い餅面です。
茶葉に隙間があり、空気の通りのよいほうが、熟成はすすみやすく、湿度がうまく逃がされるので失敗も少ないです。反対に、茶葉に隙間のないものは、茶葉から水分が逃げにくく、不良発酵しやすいと言えます。そのため、茶商は意識して「7532」などの小さな茶葉できっちりと固まったタイプの餅茶を、比較的乾燥したところへ置くようにします。
このことから、「7542」と「7532」には、熟成の具合に差があって当然なのです。
+【7542七子餅茶80年代中期プーアル茶】

1970年代の「7542」と、1980年代の「7542」の飲み比べ。

七子小緑印圓茶7542の散茶と7542七子餅茶80年代中期
七子小緑印圓茶7542の散茶と7542七子餅茶80年代中期
七子小緑印圓茶7542の散茶と7542七子餅茶80年代中期
左: 七子小緑印圓茶7542の散茶 (このお茶)
右: 7542七子餅茶80年代中期

1970年代の「7542」と、1980年代の「7542」の飲み比べです。ほぼ同じ味、同じ香りです。7542として共通することがはっきりと分かります。色の違いがあるほどには、風味に違いはありませんが、「七子小緑印圓茶の散茶」のほうが、熟成の進んだ風味に仕上がっています。
洗茶を済ませてから、1煎めが上の写真。2煎めが下の写真です。2煎めになると、この2つのお茶の色が近づいています。これは、すでに散茶になったものと、固形茶との違いです。散茶は、運搬中に茶葉と茶葉が摩擦して、形を傷めたり、粉になったりするところがあります。そうすると、煎じはじめのほうは、どうしても一気に色が出ることになります。2煎め、3煎めになると、それは落ち着きます。同じ銘柄、同じグレードの茶葉でも、散茶にされたものが安価なのは、このためです。


葉底(煎じた後の茶葉)
左: 七子小緑印圓茶7542の散茶 (このお茶)
右: 7542七子餅茶80年代中期

葉底の色と質感には、熟成の差が現れていますが、配合されている等級のブレンド具合はそっくりです。

■その他



白露(bai lu)があります。
茶葉が湿ったときに成分が浮き出て白くなるものですが、このお茶の場合は熟成具合に問題なく、白露は品質を落とすものではありません。

七子小緑印圓茶7542の散茶

また新しい情報があれば、ここに文章を追加してゆきたいと思います。

七子小緑印圓茶7542の散茶

茶葉の量のめやすは以下をご参照ください。
+【5gのプーアール茶葉でどのくらい飲めるか?】

保存方法については、以下のコーナーをご参照ください。
+
【プーアール茶の保存方法】

+【プーアール茶.com店長にメール】


つぎにこのプーアール茶はいかがでしょうか?

73青餅7542七子餅茶
+【このプーアル茶の詳細】


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