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丁家老寨紅餅2019年・秋天

ding jia lao zhai hong bing cha

丁家老寨紅餅2019年

■概要
采茶 : 2018年11月19日
茶葉 : 西双版納州漫撒山丁家老寨・古樹
茶廠 : 農家・店長
圧餅 : 2018年11月25日
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 紙包+密封
数量 : 13枚+崩し1枚
出品 : 2020年5月2日出品

■オリジナルのお茶
2019年の秋のお茶です。
当店のオリジナル品です。
+【当店オリジナルのお茶について】

丁家老寨の山

■丁家老寨
2019年の秋、晩秋を求めて丁家老寨を訪ねました。
春の旬は早春ですが、秋の旬は晩秋です。
夏の雨季から冬の乾季へ向かう秋は、10月頃が一般的にはお茶づくりのピークです。
気温が高く雨が多いほど茶葉の育ちはよいので、収穫量を考えると初秋ほどよいことになりますが、お茶の味を考えると晩秋ほどよいはずです。

丁家老寨の空

気温が下がり、朝は靄に包まれ、昼は雲ひとつない青空がひろがる。それが秋らしい天気ですが、ところが、この数年は晩秋になっても気温が下がらず、雲の多い日が続いています。
2019年も遅い秋になりました。
「もう残りわずかしかない」と農家から連絡が入るのを待ちに待って、山に上りました。
ほんとうは10月末には摘み終わるのを、農家が保留してくれました。
采茶は11月19日。
これほど遅い秋ははじめてです。
農家に言わせると”冬茶”ですが、これこそ狙いどおりの秋の旬です。
このタイミングの采茶は、栽培化のすすんだ古茶樹でなければできません。
その逆に、栽培家がすすんいない自然な育ちほど、春は遅く始まり秋は早く終わります。茶樹にはそういう性質があります。
例えば、昨年の秋は刮風寨の古茶樹で紅茶をつくりましたが、国有林の深い森に育つ茶樹なので、秋は早く終わります。采茶は10月12日でしたが、そのときすでに新芽・若葉は残りわずかで、次の週にはもう新しい芽は出なくなっていました。
+【刮風秋水紅餅2018年】
「摘めば摘むほど葉が増える。」
農家はそう言います。栽培化のすすんだ茶樹は、人の手入れによってより日光を受けたり、采茶の回数が多いため脇芽が育ったりして、旺盛に育ちます。
根から上がってくる栄養を葉数の分だけ分けるので、お茶の味は薄まると考えられますが、それと引き換えに、3月の早春と11月の晩秋のタイミングにも采茶が可能となります。
晩秋のギリギリにどんな風味が宿るのか確かめてみます。

丁家老寨の茶地

茶地

丁家老寨の茶地

采茶

采茶

茶樹

茶地

摘み手は農家の家族と自分と合わせて4人。
少人数ですが、摘み時の新芽・若葉が残り少なく、4人いれば一日で摘み終わるくらいでした。
鮮葉の収穫は11キロほど。
この農家の2019年の最後の日。丁家老寨でも最後の茶摘みとなったはずです。
一天一采のお茶づくり。
ある一日に摘んだ茶葉で、ひとつのお茶を仕上げます。

■萎凋
冬が近づき、太陽光線が弱く、気温が下がっています。
その日の気候もお茶づくりに影響します。
茶葉の水分が抜けるのに時間がかかるため、茶地に布をひろげて、摘んだそばから萎凋をはじめています。

茶葉

茶地で萎凋

夕方になって采茶を終えて、製茶場のある村まで戻ります。
歩いて30分+車で30分の移動です。

山

帰り道

村に着いてからまた萎凋のつづきです。
沈む夕日に30分ほどあてることができました。茶葉の温度が上がると水分が抜けやすくなります。

萎凋

夕方の空

夜は気温が下がって萎凋がすすみません。
次の日の太陽にあてて、また茶葉の温度を上げます。
なるべく均一に水分が抜けるよう、乾きすぎるところができないよう、たまに撹拌して、集めて、また広げて、手入れします。

次の日の朝

萎凋おわり

しなしなに萎れるまで待って、午前11時半になりました。
茶葉を4つに分けて布にくるんで揉捻します。
1回分の茶葉を少なくするほど体重が集中して、強く揉むことができます。
自分が30分×2回。農家の若者が30分×2回。

揉捻

揉捻の布

農家の若者は体重80キロで自分よりも16キロ重いので、揉捻の最後の仕上げに力を込めてもらいました。
この最後のひと圧しで、茶漿と呼ぶ茶葉の汁が布に色をつけます。
1時間かかって、12時半に揉捻が終りました。
しっかり揉捻できたと思います。
揉捻の後、布袋につめて軽発酵です。

軽発酵

いつもの秋よりも気温が下がっているので、茶葉の温度が上がりにくいため、布袋ごと太陽に当てました。
電熱などで加温はしません。
なるべく自然に、その日の天候なりに、という方針です。

晒干開始

製茶場に太陽の当たるのは9時半から5時半まで。8時間。
揉捻が終ったのが12時半。
あと5時しか太陽光がありません。
もしも太陽が沈んでから晒干をはじめると生乾きのまま朝まで待って、温度が上がらないまま軽発酵がうまくすすまず、中途半端に乾くことになり、仕上がりが悪くなります。
軽発酵の時間配分が考えどころです。
晒干で仕上げる紅茶は、太陽光にあてる目的がふたつあります。
ひとつは乾燥。もうひとつは水分のあるうちに温度を上げて軽発酵をすすめることです。
今日中に太陽にあてるか、それとも明日の太陽を待つか。
今日はじめるとしたら軽発酵の時間が短くなり、明日まで待てば軽発酵の時間が長くなります。
翌日(11月21日)は雲が多くなると天気予報は予測しています。
もしも天気予報のとおり明日は雲が多くて、茶葉の温度をあげられなければ、軽発酵はうまくゆきません。
このリスクを考えて強い太陽のでている今日中にはじめることにしました。
最低3時間はあてたいところです。逆算すると軽発酵の布袋に入る時間は2時間くらい。
理想からしたらちょっと短いのですが、仕方がありません。
一天一采のお茶の個性がこうして生まれます。

開始のときの茶葉

乾燥しかけの茶葉

茶葉の色

幸い太陽光は強く、想定していたよりもしっかり紅茶らしくなりました。
日が沈む頃には7割がた乾燥したので、酸っぱくなったりする心配はありません。
天気予報のとおり翌日11月21日は雲が多くなりましたが、のこり3割の乾燥には十分でした。
なんとか帳尻を合わせられたと思います。

■圧餅
圧餅は自分ひとりでしています。
家庭の厨房のカンタンな設備ですが、仕上がりに差がつくと考えています。
茶葉の蒸し具合の微妙な調整や、石型の圧し揉みをしっかり丁寧にできること。
効率よく流れ作業で行われる工房の圧餅とは異なる効果があります。

蒸し器

圧餅布整形

圧餅布整形

石磨圧延

圧餅涼干

餅面

圧餅晒干

180gサイズ13枚分。
1枚を試飲用に圧餅しました。
蒸し時間は1枚につき10分。
蒸すときの熱と水分によっても軽発酵がすすみます。
蒸し器から漏れる香りの変化からそれがわかります。
長く蒸すほど一方的に茶葉の水分量が増えるというわけではありません。茶葉が高温になってくると水分が抜けやすく、乾きやすくなるためです。
なので、水に濡れて酸っぱくなったりはしません。
この紅茶の製法においては、火(熱)を入れることのできるのは圧餅の工程だけです。
ここでしっかり火を入れておきたいわけです。
10分の蒸し時間は長いようで、それでも他の製法の紅茶に比べると火入れ加減は浅いほうだと考えています。
圧餅後の乾燥は、晒干を半日と涼干(陰干し)を6日間。ゆっくり乾かしました。

■品茶
圧餅後1ヶ月経ってからの試飲です。

泡茶

泡茶適度

明るい茶湯の色です。
軽発酵の浅い仕上がりが現れています。
見た目と異なり、風味はしっかり熟した感が出ています。
圧餅前の散茶のときには鮮花のようなツンとした”鮮味”がありましたが、圧餅後にはドライフラワーのように落ち着いた香りになっています。
若干ですが、生茶の老茶にある”陳化”の香り、ちょっと松の葉に似たのが出ていて、高級感を感じます。
漫撒山の甘いお茶です。この地域の古茶樹の特徴が素直に出て、スッキリしながら甘い絶妙のバランスです。
春のようなエネルギッシュなことはなく、秋のシンと澄んだ空気に枯れや豊潤の細部が現れています。

泡茶蒸らしすぎ

試しに、蒸らしを5分くらい長くして、バランスを崩してみました。
こうなると酸味が出て美味しくなくなります。
火入れの少ない”生”の性質が現れます。
湯は沸騰したてのアツアツでよいのですが、注ぎや蒸らしでちょうど良い頃合いを見つけるとよいと思います。

葉底

葉底は、秋のわりには新芽・若葉が多い構成です。
軽発酵の浅めに仕上がった色が現れています。

■出品
2020年5月2日出品。
ほぼ半年熟成してからの出品です。
茶箱熟成です。

店長のブログ茶想にて紹介。
+【丁家老寨紅餅2019年・秋天 その1.】


丁家老寨紅餅2019年・秋天 1枚 180g 


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