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【オリジナルのお茶の記録】


紫・むらさき秋天紅茶2011年 その1

murasaki qiu tian hong cha

巴達古樹紅餅紅茶

■概要
製造 : 2011年10月21日
茶葉 : 西双版納州孟海県巴達山曼邁寨秋茶
製茶 : 賀松寨の製茶農家
茶廠 : 孟海県の茶廠
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶 385gサイズ
保存 : 西双版納―上海
当店のオリジナル品です。
+【当店オリジナルのお茶について】

■はじめに
このお茶は、茶交易時代にあった圧延の紅茶を再現しています。
秋の茶葉の煙燻の香りと強い甘味が特徴です。
以下の文章は読まなくても、美味しく飲めます。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

■2011年の秋の山
2011年は悪天候の年でした。
春から秋にかけて雨の日が多すぎました。雨水が山に沁み込み低いほうへ流れてゆく南の方角のタイ王国では、雨季の終わる頃に水があふれ出していました。

もともと雨の多い地域ですが、洪水の原因には思い当りがあります。この数年とくに西双版納からミャンマー・ラオスにまたがる広大な原生林が焼畑され、大規模にゴム園が開発されました。中国や東南アジアで車がよく売れ、タイヤにする天然ゴムの需要が急増しているのです。

保水力のある原生林が減り、山が水を抱えきれず、雨季の洪水と乾季のかんばつがセットになった異常気象になっています。
茶樹はゴム園よりもずっと山の高い位置にあるので、今のところ直接的な影響はありませんが、将来はわかりません。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

雨が多いと茶葉はよく育ちます。産量が増えて、その分価格は下がるので、大量生産の業者からしてみると、2011年は豊作だったことになります。

しかし、味を競うようなお茶に雨の多いのは良くありません。
土に水分が多く茶葉の成長が早いと、味も香りも薄まります。また曇り空では製茶の晒干(天日干し)がすっきり仕上がらず、本来の風味が引き出せません。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

さらに、当店の求めている自然栽培の古茶樹は、うね作りの茶畑で育つ若い茶樹よりも発芽期間が短いので、茶摘みの日数が限られます。雨の日が多くなると、収穫量が減るのです。

実際のところ、2011年は茶摘みの旬のベストなタイミングはほんの10日間くらいしかありませんでした。早春のまだ雨の降らない6日間と、雨の季節が終わった秋の終わりの4日間です。365日のうちのたった10日間です。
旬にこだわるとそうなりますが、しかし、本来高級茶とはそのようなものかもしれません。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

通常の秋であれば、9月末には雨の季節が終わり、カラッと晴れた日が続いて涼しい風が吹きだすと、新芽の育ちがゆっくりになって、茎が短くつまってきます。秋も深まり吐く息が白くなるほど夜が冷えてくると、古茶樹はみっしり茶葉をまとったまま、じっとして冬を越します。
その冬支度の茶葉を、新芽や若葉のうちに摘むのが秋の旬です。それはだいたい10月末頃まであるはずです。

秋の終わりには茶樹は白い花と種をいっぱいつけます。古茶樹の森に入ると、ふわっと花の香りがただよって、ミツバチが騒いでいます。その花の香りは茶葉にも宿るので、秋の旬の風味は格別なのです。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

ところが、2011年は10月になってもほぼ毎日1時間ちかく雨の降る日がつづいていました。空にはまだ夏のような白い雲が沸き上がっています。

10月中旬になってようやく秋晴れのカラッとした天気が3~4日つづきましたが、しかしこんどは新芽が出なくなってきました。
農家からその連絡を受けてあわてて山に上がってみると、たしかに茶摘みをしている人が見当たりません。
古茶樹の森は、小鳥や虫の声だけが聞こえてひっそりとしています。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

森を1時間くらい歩いて、ようやく茶摘みをする人をひとり見つけました。
布朗族(ブーラン族)の人です。様子を聞くと、やはりこの数日で急に新芽が少なくなったようです。割に合わない仕事になるので、みんなは冬支度のために「赤米」と呼ばれている米の収穫に行ったそうです。

赤米は水なしの田んぼでつくれるので、山の人びとの自給自足の生活をささえています。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

向かい側の山の斜面に、赤米の田が見えていました。段々畑のようにみえるのがそれです。

この赤米はほんとうに美味しいのですが、山の人のご飯であって、町にはあまり流通しません。
水田でつくられる白米よりも歯ごたえがあり、かすかに土臭いというか玄米のようなクセがあり、ひと粒ひと粒に小豆色の点が入るのが見た目に美しくないせいか、商品価値が低いのだと思います。それに、外地へ売るほど量をつくるのも難しそうです。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

ところが、この赤米を4~5日食べ続けるとなにかが変わってきます。
淡泊で滋味ある風味に味覚が慣れるせいか、とくに日本のブランド米のようなピカピカの白い米が喉を通らなくなります。甘すぎてやわらかすぎて食後はなぜか腹にもたれます。
白い米が「美味しいか?」と聞かれたら「美味しい」と答えるでしょう。しかし、不自然なまでの甘さや柔らかさは、身体が求めないような気がします。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

山の食べものは、はじめはよくわからない味でも噛むほどに深くなってきて、複雑な滋味が楽しめるようになります。食べた後はじわじわと身体の一部になってゆくのが感じられます。
そんな食生活を数日体験したら、ゆっくりした味わいを身体が求めるようになります。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

舌にぱっと美味しくて食欲をかきたてる。かんたんでわかりやすい。見た目が美しい。清潔で手間いらず。
「商品」としての必要な機能と、毎日食べるものに必要な機能とはちがうのかもしれません。
都市生活の食べものには流通があるので、流通に都合の良い商品としての機能を備えるのでしょうが、当店のお茶はできるだけ山の食べモノと同様にありたいと思います。

■その2 紅茶づくり(つづき)

【紫・むらさき秋天紅茶2011年 その2】


2015年08月20日 終了


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