
■オリジナル紅茶
雲南省西双版納の古茶樹でつくった「紅茶」です。
長期保存のできる餅茶にしました。
当店オリジナルのお茶です。
+【当店オリジナルのお茶について】

■2011年の秋の山
ふりかえってみると、2011年は悪天候の年でした。
春から秋にかけて雨の日が多すぎたのです。
空にはいつも雲が多く、山には雨が降り注ぎ、しみ込んだ雨水が低いほうへと流れてゆく南の方角のタイ王国では、雨季の終わる10月中頃になって水があふれ出していました。
もともと雨の多い地域ですが、洪水の原因には思い当りがあります。この数年とくに西双版納やラオスやミャンマーの広大な原生林が焼かれ、ゴム園の開発が大規模に行われました。中国や東南アジアで車がよく売れて、タイヤになる天然ゴムの需要が拡大しているからです。
保水力のある原生林が減ったことで、山が水を抱えられなくなっているのです。
お茶の樹はゴムの樹よりも山のずっと高い位置にあるので、今のところ直接的な影響はありませんが、将来はわかりません。

雨が多いと茶葉はよく育ちます。
産量が増えてその分価格は下がるので、大量生産大量販売の業者からしてみると、2011年は豊作だったことになります。
しかし、風味を競うようなお茶に雨の多いのは良くありません。
土に水分が多くて茶葉の成長が早いと、味も香りも薄まります。また曇り空では製茶の晒干(天日干し)がすっきり仕上がらず、本来の風味が引き出せません。

さらに当店の求めている自然栽培の古茶樹は、うね作りの茶畑で育つ若い茶樹よりも発芽期間が短いので、茶摘みの日数が限られています。悪天候で茶摘みの出来ない日が多くなると余計にひびきます。
2011年の春のお茶づくりでは、茶摘みのベストなタイミングの日はほんの10日間くらいでした。早春の雨のふりはじめる前の数日間と、雨の季節が終わった秋の終わりの数日間です。365日のうちの10日間です。
旬にこだわりすぎたからそうなったのかもしれませんが、しかし、本来はそのようなものなのかもしれません。

通常の秋であれば9月末には雨の季節が終わり、カラッと晴れて涼しい風が吹く10月には新芽の育ちがゆっくりになって、茎が短くつまってきます。そして吐く息が白くなるほど夜が冷えてくると、古茶樹はみっしり茶葉をまとったままじっとして冬を越します。
その冬支度の茶葉を新芽や若葉のうちに摘むのが秋の旬です。それはだいたい10月末頃まであるはずです。
秋の終わりには白い花と種をいっぱいつけます。古茶樹の群生する森に入るとふわっと花の香りがただよってミツバチが騒いでいます。体についたのをつい払いのけて刺されることはしょっちゅうです。
香りは茶の花だけでなく茶葉にも宿るので、旬の美味しさは格別なのです。

ところが、2011年は10月になっても毎日1時間は雨の降る日がつづいていました。空にはまだ夏のような白い雲が沸き上がっています。
10月中旬になってようやく秋晴れのカラッとした天気が3~4日つづきました。しかしこんどは新芽が出なくなってきました。
農家からその連絡を受けてあわてて山に上がってみると、たしかに茶摘みをしている人が見当たりません。
小鳥や虫の声だけが聞こえてひっそりとしています。



1時間くらい歩いてようやく茶摘みをする人をひとり見つけました。ブーラン族の人です。様子を聞くと、やはり雨が終わってから数日後に急に新芽が少なくなったようです。割に合わない仕事なのでみんなは冬支度のために「赤米」と呼ばれている米の収穫に行ったそうです。
その米は水なしの田んぼで山の斜面につくれるので、山の人びとの自給自足の生活をささえています。

森から見える向かい側の山の斜面にその畑が見えていました。段々畑のようにみえるのがそれです。
この赤米はほんとうに美味しいのですが、あくまでも山の人のご飯であって、町にはあまり流通しません。
水田でつくられる白米よりも歯ごたえがあり、かすかに土臭いというか玄米のようなクセがあり、ひと粒ひと粒に小豆色の点が入るのが見た目に美しくないせいか商品価値が低いのだと思います。それに、外地へ売るほど量をつくるのも難しそうです。


ところが、この赤米を4~5日食べ続けると変わってきます。
味覚がその淡泊で滋味ある風味に慣れるせいか、とくに日本のブランド米のようなピカピカの白い米が喉を通らなくなります。甘すぎてやわらかすぎて食後はなぜか腹にもたれます。
「美味しいか?」と聞かれたら「美味しい」と答えるでしょう。
しかし、体が求めなくなってくるような気がします。


山の食べものは、はじめはよくわからない味でも噛むほどに深くなってきて、複雑な滋味も楽しめるようになります。食べた後はじわじわと体の一部になってゆくのが感じられます。そんな食生活を数日体験したら、いつのまにか体がゆっくりした味わいを求めるようになります。


舌にぱっと美味しくて食欲をかきたてる。かんたんでわかりやすい。見た目が美しい。清潔で手間いらず。など「商品」としての必要な機能と、毎日食べるものにあるべき機能とはちがうのだと思います。この紅茶も商品としての機能を捨てて、山の食べモノと同じように毎日飲むためのものでありたいと思います。
■その2 紅茶づくり(つづき)
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