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【オリジナルのお茶の記録】


易武春風青餅2011年プーアル茶 その4

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易武春風青餅プーアル茶

■茶葉の違い
出来たての生茶のプーアール茶の、最近の茶荘での煎じ方を見ていると、大きめの蓋碗に茶葉をたくさん入れて短時間でさっと抽出しています。
このやり方が美味しいのですが、家庭で楽しむにはちょっと贅沢です。

年代モノの老茶はそれとは異なり、中くらいの蓋碗に少しの茶葉を入れて、やや長めの時間で抽出します。
老茶は熟成によって茶葉が変質しているので、この淹れ方が適しているのですが、それよりも茶葉の形状の違いに当店は注目しています。

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

今回は春いちばんを「挑茶」したので、昨年の『易武古樹青餅2010年』と比べても、かなり小さな茶葉が揃いました。この小さな茶葉は、老茶の高級品につかわれた茶葉に形が似ています。
近年の生茶はこれに比べるとかなり大きな茶葉が使われています。
下の写真は4月になってから易武山に入って撮影したものです。

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

ずいぶん大きく育っています。
そして1芽3葉くらいに摘まれているので、重量も3倍はあります。
重量あたりいくらと相場の決まる毛茶を、いかにたくさんつくるかが農家の商売です。小さな茶葉では割が合いません。大きく育つのを待つほうが得なのです。

大きく育った茶葉を、老茶のようにしっかり揉捻してみても、よじれて小さくならずに、ただ細長くひょろひょろと貧相な感じになります。ある程度葉の開いたままのほうが見栄えがよくて、売りやすくなります。

開いた茶葉は、味の抽出される時間が短くて済みます。ゆっくり煮出してしまうと苦味や渋味が立つので、短時間でさっと湯を切るような淹れ方になります。

易武春風青餅プーアル茶

短時間でさっと淹れるなら、火入れをしっかりしたほうが香りが引き立ちます。すなわちすぐに美味しいと分かる風味です。その緑茶っぽい風味は、新しいプーアール茶のファンの多い北京や上海の人々の慣れ親しんだ風味です。

一方で、小さめのやわらかい茶葉をしっかり揉捻すると、湯を注いでもすぐには開きません。味を抽出するには少し時間がかかります。その間にも湯の熱が茶葉に通ってゆき、コクのある風味が引き出されます。

大きめの開いた茶葉と、小さめの揉捻された茶葉と、この形状の違いは茶葉の成分だけでなく、煎じ方にも違いを生み、ひいてはお茶の味にも違いをつくることになります。
老茶と近年の新しいお茶の味の違う理由が、ここにもあると思います。

■品茶
まず餅身を見てわかることをいくつか挙げます。
古い石型の圧餅はやや平べったく厚みがなく、円盤の直径が少し大きめになっています。このほうが乾きやすいので、圧餅後の低温乾燥には都合が良かったと思います。

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

茶摘みから8カ月経っているので、餅面の茶葉の色はやや赤味を帯びていますが、全体的に青黒くくすんだ感じがわかると思います。揉捻を強く仕上げた茶葉が小さく捩れて「採辧春尖」と昔の言い方のように繊細さがあります。
少し大きめの茶葉のペタッと潰れた形状は、比較的大きく開いてもまだやわらかい若葉であったものです。昔の易武山の名作にも良く似た形状があるので、それが手元にある方は比べてみてください。

易武春風青餅プーアル茶

7枚組一筒は竹皮包みにしてあります。
竹庇護が6層になる伝統の結び方です。餅身が平べったく厚みがないので、他の当店のオリジナルに比べると一筒七枚組の高さも少し低くなっています。
包み紙は雲南省大理産の手すき紙で2重にしてあります。

■飲み比べ

易武春風青餅プーアル茶

左: 『易武春風青餅2011年』このお茶
右: 『易武古樹青餅2010年』

昨年の『易武古樹青餅2010年』と比較してみます。
餅面に見える茶葉の大きさはあきらかに違います。
『易武古樹青餅2010年』は挑茶をしていないので、少し育った茶葉が混ざります。2010年3月1日から4月10日までの長い期間の茶摘みとなったのですが、2010年はかんばつで雨がほとんどなかったので、比較的小さな茶葉になりました。それでも大きさの差があります。
餅面の色が1年の差があるとは思えないほど接近しているのは、このお茶『易武春風青餅2011年』の火入れを浅くしたことによって、熟成変化のスピードが早いせいだと思うのですが、まだはっきりしない点もあるので、これから観察をつづけたいと思います。

易武春風青餅プーアル茶
左: 『易武春風青餅2011年』このお茶
右: 『易武古樹青餅2010年』

「無い味」のつくれたことがこの飲み比べでわかります。
はっきりとした味が認識できなくとも、存在感たっぷりで、「味が無い」とは言わせません。はっきりしないがゆえにそこに生まれる空間は広く、深く、余韻となって印象がいつまでも続きます。
当店としてはこのお茶の仕上がりにとても満足しています。このお茶が高級と呼べるにふさわしいかどうかは飲む人の判断ですが、「無い味」の自己評価としては最高級に分類できるお茶です。

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

欲を言えば、さらに2倍のお金と手間をかければ、昔の名作にもう一歩近づくと思います。昔の人はそれをとことんやったのではないでしょうか。しかしそういう時代ではないと思うので、このつぎはどうするのか、来年の春までにゆっくり考えたいと思います。

■お茶の名前
このお茶の名前を春風「はるかぜ」としました。
言うまでもなく2011年の易武山の春の風が心地よかったのが印象に残っているからです。 この風の香りとこのお茶の香りはよく似ています。
日本語読みにしたのは、日本人が仕事をしたということを残したかったからです。この仕事は今の時代や現地の社会環境に合った経済的な仕事ではありません。農家や茶廠のみなさんとの摩擦はここに書かないだけで、少なからずあります。生まれ育ちの違う外国人だから許してもらっているところもあると思います。現地国の人々にはかえって難しくなった仕事をしたはずです。

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

易武春風青餅プーアル茶

■飲み方について
自由に、使い慣れた茶器で試していただくのが良いと思いますが、少しだけ補足しておきます。
早春の茶葉でつくられたこのお茶は、他の季節のお茶よりも少なめの茶葉で煎じてちょうどよいくらいです。「無い味」と言いながらも実は成分が濃厚です。
また煎が長く続きます。一煎ごとにポットの湯を注ぎ切って残さないようにすると、新鮮な風味が何煎でも続きます。

■その5 熟成 (つづき)
【易武春風青餅2011年プーアル茶 その5】


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