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漫撒古樹青餅2013年 その5

man sa gu shu qing bing cha

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

■苦いは甘い
甘いお茶といっても、それは印象のことであって、糖分が多いということではありません。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

弯弓やラオスの瑶族のお茶は長い茎が多いので、これは実際に糖分の甘さもあると思います。 しかし、易武山や漫撒茶山のお茶は人が手をかけた栽培と、製茶の仕上げに茎を取り除くなどの技術の成熟によって、その実質的な甘さを無くそうとしているようなところがあります。
実際に他の茶山のお茶と並べて飲み比べたときには、評判ほどには甘くない。むしろ苦いほうだと感じることさえあります。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

ところが、1日か2日してからその味を思い出すと、唾液が沸いてきます。 「易武のお茶は甘かった。」 と、記憶に刻まれているのです。

甘いという印象が大事で、しかし本当に甘いのでは芸がない。
そういう美意識がこのお茶を求めた人々にあったのではないか?
と、そう考えると、栽培や製茶の成熟した過程につじつまの合うところがたくさん見つかります。
ほんとうは苦いのに甘く感じさせる。
香りに甘味をもたせるのは有効な手のひとつです。
対極にある苦味や渋味もまた、甘味を引き立てるために必要です。

一度炒りと二度炒り。
この晒青毛茶(農家の半完成品の茶葉)を飲み比べた時に、どちらが甘いかというと、実は一般的な製法の一度炒りのほうです。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶
左: 二度炒り
右: 一度炒り

一度炒りの葉底(煎じた後の茶葉)の色は黄色っぽく、ところどころ赤く変色しています。実質的な成分変化はすすんでいるのです。苦味は旨味に変化し、相対的に甘味が増しています。
二度炒りで水分を失ったものは、その効果が少なくなります。
しかし、印象という点では二度炒りです。
その香り、苦み、渋味、喉ごし、余韻、すべてが甘い記憶になります。
+【苦いは甘い/ブログ茶想】

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■焦点
もうひとつおさえておくべき味の個性について。
それは、いつも同じにはならない揺れの面白さです。
例えば、烏龍茶の銘茶には茶師がピタッと決めた風味があって、淹れるときにはできるだけその意図に近づけようとします。
生茶のプーアール茶でも、当店の『巴達古樹青餅2010年』は、はじめは簡単には焦点が合いませんが、一度ピタッ決まると、次からは焦点が見つけやすくなります。
+【巴達古樹青餅2010年プーアル茶】

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

易武山や漫撒茶山のお茶はそういうわけにはゆきません。
何度淹れてもちがう美味しさがあったり、うまくゆかないと感じたり、焦点があるようでないようで、とらえどころがありません。
+【無い味/お茶の鑑賞】
色も形も風味もそれぞれ異なる混生の茶葉に、ピタッと焦点を合わせるような製茶ができるわけがありません。もとよりそうするつもりの道具や設備もありません。つくる段階では意図した風味の設定が難しいのです。
その不確実性は圧餅の加工にもあります。

■圧餅
『漫撒古樹青餅2013年』は3種の餅茶になります。

  1. 漫撒古樹青餅2013年・黄印 (丁家老寨一度炒り 半発酵)
  2. 漫撒古樹青餅2013年・青印 (丁家老寨二度炒り 半発酵)
  3. 漫撒古樹青餅2013年・緑印 (易武瑶洞一度炒り 無発酵)

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

「易武瑶洞」は、麻黒村からラオスと国境を接する「刮風寨」へ向かう山道にある森です。この辺りも瑶族の古い地域です。
麻黒村の農家に干してあった晒青毛茶に色の違いを見つけ、その場で試飲したところ、甘味と苦味に特別な底力を感じました。聞くと、瑶洞で剪定をしない栽培を試しているということでした。丁家老寨の栽培とは異なり枝の分岐を許すのですが、森林の生態環境が良く健康的な茶樹です。もちろん無農薬・無肥料です。
農家の一般的な製茶方法なので、より発酵の少ない緑茶に近い晒青毛茶です。これを確保して餅茶にすることにしました。
丁家老寨のお茶とのコントラストが楽しめると思います。
瑶族の息のかかった「漫撒茶山」という共通点もあります。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

圧延加工(圧餅)を予約して、いよいよ明日工房へというときにトラブルがありました。
製茶日ごとに袋分けしていた「丁家老寨の二度炒り・青印」の毛茶が、黄片(成長して硬くなった茶葉)を取り除く作業のあと、まとめてひとつの袋に入れられました。
直感が働いて、すぐに袋から出して部分ごとに試飲すると、その7割に焦げ味が見つかりました。農家が失敗を隠そうとしたのです。危うくそのまま圧餅するところでした。
焦げ味のない部分を選ぶと、3分の1しか残りませんでした。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

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漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

圧餅は晒干(天日干し)。
蒸して固めた茶葉を乾燥させる太陽光線が特別な香りを与えてくれます。表面を軽く焦がすと、1年くらい経ってからジャスミンのような芳香が生まれます。

水分と熱が製茶の仕上がりを左右するように、圧餅もまた水分と熱にゆれます。
太陽で餅面を焼きつつも、涼しい風に晒して内部の温度が上がらないようにします。温度が上昇しすぎると渋味や酸味が増すので、それを防ぐために室内でしっかり涼干(陰干し)してから晒干します。水分が減ると、急激な成分変化の心配がなくなります。

涼干はそのときの湿度にもよりますが、24時間は待ちたいので、早朝のうちに圧延加工して、次の日の朝の太陽を待つのが理想です。このために圧餅作業は2日に分けて行い、3日目の晩にすべて完成しました。

4月中旬のこのときは雨季の入り口で、太陽が燦々と照ったり雨がパラパラしたりするので、そのたびに棚を外に出したり中に入れたりします。
天候によって茶葉の水分や温度は違い、そして仕上がりの風味も変わってきます。 それが面白いのです。

■環境

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

写真は「易武山落水洞」の餅茶です。
広西チワン族自治区桂林市で茶館を営むオーナーが自ら農家を訪ねて手に入れた毛茶を、同じ日に圧餅加工していました。
広西省は茶文化の古い地域で、茶館でお茶を嗜むのは教養や格式にかかわるため、客は上質を求め、茶館の主人は全国をめぐって自らの手で上質なお茶を集めるのが仕事になっているそうです。
清く甘い香りに特徴があるので、尋ねると、落水洞の農家が剪定をしない十数本の茶樹から採集したもので、1年に15キロだけつくるとのこと。
毛茶を湯に浸けると、発色の良い緑色の葉に、茎は角ばって細く硬くやや橙ががった色をしています。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

農家にまだ少し残っていると聞いたので、すぐに電話をしました。
(この毛茶は当店のアウトレットにて販売予定)。
圧延工房のある漫臘村は落水洞からバイクで山道を15キロほどです。農家の子供が持ってきたので詳しくなかったのですが、このように質問しました。

「これは落水洞のどの辺りにある茶樹ですか?」
「村から1キロほど山を登ります。竹を渡して木に登って摘みます。」
「そのとき、茶樹を選んでいますか?葉の色や形の特定のものを選んで摘んでいるのではないですか?」
「それはわかりませんが、古い母樹があって、その周りに育った古樹なので、だいたい同じかもしれません。」

知ってか知らずか、このお茶は品種が選ばれています。
もともと香りのよい品種。しかも葉の形や大きさがそろい、精度の高い製茶ができます。
もしかしたら、清代の貢茶づくりや易武山の茶荘が1950年以前につくっていた高級餅茶にも、このように品種を選んだことがあったのかもしれません。

桂林の茶館の主人はこの話にたいへん満足で、品種の混生状態であるこの地域の古茶樹のお茶づくりの精度の低さに不満を漏らしました。
当店の丁家老寨の半発酵に苦労したことや、焦げた茶葉のことなど、技術の問題を話し合いました。
それを聞いていた工房のオーナー(台湾人)はこう話しました。

「あなたたちの話もわかります。今のこの地域の古茶樹の価格は高級茶に手の届くレベルになっているのに、農家の製茶技術は低いです。
しかし、ここのお茶はやはり素質の魅力にかかっているのではないでしょうか。素質が良ければ、少々焦げていようが、意図せず発酵して赤く変色していようが、美味しいお茶になります。
私は全国のいろんなお茶どころをまわりましたが、1994年にはじめてここへ来た時の驚きはたいへんなものでした。古代の景色を見るような熱帯雨林、霧に包まれた山々、自然と共に生きてお茶づくりをしている人々。こんな環境は他のお茶どころにはありません。いまや見るも無残に開発されましたが、山奥にはまだまだあります。
そういえば、品種のことですが、私が来た時には新芽が大きくて白くて毛をいっぱいつけたのが、そこらじゅうにありました。麻黒村にも丁家老寨にもです。それが最近少ないです。」

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

この話を聞いた丁家老寨の農家が、
「数年前にラオスに近い山頂の森に野生の茶樹を見つけた。油をたくさん含んだ緑の葉で、すごく良い香りがする。」
という話をしだして、早速行ってみようということになりました。
歩いて5時間だったところが、大企業の牧場開発のためのつい先月に山道が開通して、オフロード車で50分でゆけるようなっています。この道の工事中に、この辺りの山々にあった棘を持ったある種の竹が枯れたそうです。開発は気候の変化を引き起こし、生態系全体に大きなダメージを与えます。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

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その茶樹はまだ生きていました。
原生林の中に群生していて、葉は似たような色と形、そしてどれも同じ香りがあります。背丈が高くて原生林に溶け込んでいるので長い間わからず、秋になって白い茶の花が落ちてきて、はじめてこの山頂の森に茶樹のあることを知ったそうです。

備考
西双版納にあるこのタイプの大きな野生樹は「カメリア・タリエンシス」という近縁種であり、栽培種の「カメリア・シネンシス」とは異なることが多いのですが、ひょろひょろと育った茶樹や小さめの茶葉の特徴からして、どちらかというと栽培種の「カメリア・シネンシス・アッサミカ」に近いと見ています。
自生のものか、過去に瑶族が種をまくなりしたものか、はっきりわかりませんが、台刈りの跡が無いことや、過去の茶摘みによる枝の分岐がほとんど見当たらないことから、古くから手付かずの野生状態であったことは確実です。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

ひとにぎりだけ摘んで帰ってお茶にしました。
やや酸味が強いものの、香水のような華やかな香りは一口飲むだけで吐く息にずっと残ります。
農家はここにしかこの品種のは見たことがないと言いますが、 弯弓にも丁家老寨にもこれの変化したようなのを見ています。そして落水洞のお茶もこれとよく似た香りがあります。
ではなぜ落水洞のそれは、野生茶ほど強い香りがしないのか?油が浮かないのか?酸味が強くないのか?乾燥すると黒っぽい緑にならないのか?そして甘いのか?

これこそ生態環境の違いであり、気候の違いであり、人の栽培によって性質を変えていった結果ではないかと、そう推測しています。

環境の変化がお茶の味を変える。
人が自分の土地を越えた問題にどこまで関われるのか、お茶の栽培のこれからの課題です。

漫撒古樹青餅2013年プーアル茶

■その6 品茶 (つづき)
+【漫撒古樹青餅2013年 その6】


漫撒古樹青餅2013年 1枚 380g


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